2011年07月30日

『夢』2題

ダンナが死んでから、特に夢を見ない。
毎日疲れ果てて、薬で朦朧として寝てしまうばかりだ。
それでも、ふたつほど、印象に残る夢を見た。

今朝、見た夢がひとつ・・・

『白い崖』

みんなで旅行に来ていた。
海辺の小さな観光地で、真っ白な、どこまでも続く崖の下に、澄んだ碧色の海が広がっている。
少ない海水浴客が、楽しそうに水と戯れ、時折、子どもの笑い声が響く。
と、波を分けて夫がゆっくり姿を現した。
私は夫に向かって走り出したが、みなが「死んだんだからここにいるはずがない」「これは何かの冗談だ」「近づいたらいけない」と口々に言う。
夫はいろいろなことを覚えていない様子で、ぼんやりと辺りを見回している。
でも、私のことはかすかに覚えているのか、私を見ると腕をそっとまわしてきた。
その体が温かい。
葬儀の際、洗ってあげた髪がどんなに冷たかったか、それを思い出すと、ここにいる夫は確かに生きていると思う。
「死んだことを思い出させなければ、ずっとここにいてくれるかもしれない。言っちゃダメだよ。」みなにそう言って夫の顔を覗き込むが、その目はどこかずっと遠くを見ているようだった。
白い崖に、碧の波が寄せては返す音が、響いていた。




もうひとつは、死んですぐに見た夢である。

『青い花』

私は、海辺にある小高い丘に登ることになっていた。
丘のある駅に着いたときはもう夕方。
どこか田舎の、人気のまばらな小さな駅だ。
駅員もいるのかいないのか。

踏切を渡ろうとすると遮断機が下りてきた。
電車の通過を待つ人たちは、どれもうつむきがちで、まるで顔がないかのようだ。
服を身につけた影のような人々。
踏切の真っ赤な点滅灯だけが、鮮やかに真っ赤だ。
けれど無音。
あたりにはまるで音がない。
風の音も、波の音も、人の息吹も、足音も、密かな話し声も・・・
なにもない。

電車が一両通過していったが、まだ遮断機は上がらない。
ふたりのサラリーマンが、バーをくぐり、さっと向こうへ走っていった。
もう1両、反対から電車が通過していく。
やっと遮断機が上がり、踏切を渡ることができた。

海を見やると、さびれた風景が広がっている。
錆びて閉じっぱなしのシャッターや、字の取れた看板の向こうに、毒々しい赤で観光ホテルのネオンが光る。
歓楽街があるようにも思えるのだが、酔い騒ぐ人の声は聞こえてこない。

丘に向かって道を進んでいく。
静かな住宅街で、人の姿はまったくない。
夕餉の支度の音も、匂いさえもない。
日は暮れかけ、物を見分けるのもやっとのような薄闇が忍び寄ってくる。
その中、ジャーマンアイリスのような淡い青色の、けれどユリのような姿の花が咲いている。
夏の宵、芙蓉の花が街灯に浮き上がるように、ぽつり、ぽつり、と、青い淡い柔らかな花があちら、こちらに咲き競っている。
花に誘われるように丘に向かって上っていく。
丘の上には何があるのだろう。
なぜ、私はそこにいくのだろう。
わからない。

花は丘の上まで、ずっと咲き続いているようだった。
てっぺんが、月に照らされて、かすかに青く輝いているようだった。


posted by とんべり at 11:37| 千葉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々の光景 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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